【完】白坂くんの溺愛は危ないことだらけ
「私はケンタッキーじゃなくて、水瀬小夏です!」
「知ってるよぉ? 柳くんのお隣さんで、腐れ縁だった水瀬さんだよねぇ?」
小バカにしたように猫なで声で喋る若宮さん。
「だったら、ケンタッキーって呼ばなくていいじゃん……」
「ごめんねぇ? くるみが大事な腐れ縁の柳くんのこと盗っちゃって」
私の悲痛な訴えは聞こえていますか……?
「いや、あんなのただの腐れ縁だからご自由に」
「もちろんそのつもり。きっと柳くんもオッケーしてくれると思うからねぇ」
「そ、そうですか……」
「柳くんとラブラブな夏を過ごすから安心していーよぉ。それよりケンタッキーは、自分の心配してあげて? ねっ?」
「だから、ケンタッキーじゃないって!!」
ふふっと笑うと、パステルカラーのポーチを手に持って若宮さんは上機嫌で出口へと向かう。
手首ほっっそ!! てか白っ!!
「あ、そうだ。ケンタッキーも、梅雨の時期なんだからちゃんとケアしてあげないと、髪の毛が可哀想だよぉ?」
「か、髪の毛!?」
そう言われて鏡を見ると、とんでもないものが映っていた。
私だ……。
湿気で広がった髪はごわついてて、本当に可哀想だ。