【完】白坂くんの溺愛は危ないことだらけ


その男の足元に、キミが眠っている。

こんな暴力的なことはしたくなかった。

だから、今だけは眠っていてほしい。



「……この子、可愛いよね。浴衣もすごく似合ってるんだよ。凪はどう思う?」


「……その子に、触るな」



血が沸騰したみたいに、俺は剣崎を殴りつけた。


目を見開いた俺に、ふらつく剣崎の返り血が眼球に飛んでくる。



「……凪、腕をあげた? 鼻が折れるかと思ったじゃねぇか」



キミが目を覚まさなくてよかった。

こんな姿、見られたくないから。

こんな俺を、知ってほしくないから。



「……っ、」


手の感覚が消えていく。

お互いに限界が近かっただろう。

剣崎の薄ら笑いがぼやけて見えるし、足元からふらついてきた。

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