【完】白坂くんの溺愛は危ないことだらけ
「逃げんな、剣崎!」
休戦休戦、とふざけたことを口走りながら剣崎が背中を向けた。
俺はその腕を離すものかと一心不乱に掴んだ。
その瞬間、石段を踏み外した剣崎が倒れかけた。
「……クソっ!!」
剣崎が事態を察したのか俺の手首に掴まった。
は? 俺まで道連れにされてたまるか。
「……地獄に堕ちるなら、独りで逝け」
手を離し、振り払った瞬間だった。
バランスを崩した剣崎が数段下へと落下して、骨が砕ける嫌な音が響いた。
見下ろせば、仰向けになって笑ってやがる。
「──白坂凪。首を洗って待っておけよ。次は冥土へ送ってやるからな……」
見る限り、腕が折れていただろう。
それでも不気味なほどに笑い転げ、剣崎は闇夜に姿を消した。