【完】白坂くんの溺愛は危ないことだらけ
服で血をこすり、剣崎が消えたあと石段からキミの元へ駆け寄った。
「大丈夫ですか!? 聞こえますか!?」
だけど、その時キミは眠ったまま駆けつけた救急車の中へと運ばれていった。
隣には──泣き腫らしたアイツがいる……。
「あなたも怪我をしているじゃないですか! さぁ、乗ってください!」
車内の中で、俺と柳涼太は一言も言葉を交わすことはなかった。
病院に着くと、キミの母親が青い顔をして走ってくる。
柳と一言二言会話すると、俺の方へやって来た。
「娘を助けてくださった方ですか……?」
「……、」
俺は何も答えなかった。
あんな状態で、助けたと言えるのか。
暴力的で、手は血まみれで。
「あら? あなた、白坂さん家の子……?」
俺の顔を覗き込んで、目を丸くした。
強ばった表情かふわりと和らいで、俺を澄んだ眼差しで見つめた。
その目元は少し、キミに似ていたね……。
「本当に、ありがとうね……凪くん」
そっと肩に置かれた手がやけに温かく感じた。
俺は、キミを守れていたのか──。