【完】白坂くんの溺愛は危ないことだらけ


呼吸を整えて、剣崎が右手を振り上げる。


一心不乱に殴る剣崎に私はずっとやめてほしいと叫んでいた。


口の端から流れ出る鮮血に、心臓が押し潰されそうになる。



「……剣崎、こんなんじゃ……お前の大好きな父親には、振り向いてもらえないんじゃねぇか?」


「───っ!!」


剣崎は核心を突かれたのか、拳を握った手を宙でピタリと止めた。



「そうだろ? 暴力的な強さだけを振りかざしても、組のトップには見向きもされねぇと思うんだけど?」


「──黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ!!!」


「……もっと、利口になれ……剣崎」



憎しみに染まった剣崎の拳が白坂くんに飛んでいく。


その時、私の手から温もりが消えた。


身体が潰されたような悲痛な音が耳を貫いた。

< 299 / 367 >

この作品をシェア

pagetop