【完】白坂くんの溺愛は危ないことだらけ
呼吸を整えて、剣崎が右手を振り上げる。
一心不乱に殴る剣崎に私はずっとやめてほしいと叫んでいた。
口の端から流れ出る鮮血に、心臓が押し潰されそうになる。
「……剣崎、こんなんじゃ……お前の大好きな父親には、振り向いてもらえないんじゃねぇか?」
「───っ!!」
剣崎は核心を突かれたのか、拳を握った手を宙でピタリと止めた。
「そうだろ? 暴力的な強さだけを振りかざしても、組のトップには見向きもされねぇと思うんだけど?」
「──黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ!!!」
「……もっと、利口になれ……剣崎」
憎しみに染まった剣崎の拳が白坂くんに飛んでいく。
その時、私の手から温もりが消えた。
身体が潰されたような悲痛な音が耳を貫いた。