【完】白坂くんの溺愛は危ないことだらけ
高校に入って二ヶ月が経った。
脇役であろう私の平凡な日常が、終わりを迎えようとしているなんて、夢にも思っていなかった。
「先輩って、キスうまそうですよね」
帰りの支度を終えた放課後、斜め前の席から聞き慣れない単語が飛んできた。
……出た、白坂くん。
その声の主はクラスメイトの白坂凪(しらさか なぎ)くんだ。
「凪とだったらしてもいいよ?」
「いつになったら誘ってくれるの?」
……と。
このように、自分のクラスでもないのに不法侵入している女の先輩方に囲まれる白坂くんは、学年きってのモテ男である。
それはそれは主役級のとびきりのイケメン。
「ねっ、凪。ひとり暮らししてるって本当?」
「内緒です」
不敵な笑みを浮かべつつも爽やかな振る舞いを見せる白坂くん。
入学してからよく私にも声をかけてくれる気さくな白坂くんだけど、その爽やかスマイルが怪しいと思うこの頃。
なぜなら私、水瀬 小夏(みなせ こなつ)は、ある出来事を見てしまったからだ。