【完】白坂くんの溺愛は危ないことだらけ
「へっ? パン……? あ、ありがとう」
澪ちゃんは、鷹村ベーカリーと書かれたそれを呆然と受け取る。
「凪。お前もちゃんと水瀬を送ってやれよ」
「ちょっと!? た、鷹村!?」
そう言って、鷹村くんは驚く澪ちゃんの手を引いて帰っていった。
宵闇の中、ふたりきりになると、強ばった全身の力が少しずつ抜けていく。
「巻き込んで、ごめん」
「……」
眉を下げて心底申し訳なさそうに白坂くんが謝罪する。
「聞いたよな? アイツらが言ってたこと」
「……うん。聞こえた。天と地の双璧って」
その、片割れなのだ……と。
片割れということはもうひとり存在する。
それが誰なのか、と疑問が過ぎったけど、今はそんなことどうだっていい。
「水瀬に隠してたわけじゃない。ただ中学の頃から事情があって……追われたり色々巻き込まれることばっかりで。喧嘩吹っかけられることも、日常茶飯事だった」
吐き出された声はどこか苦しそうだった。