【完】白坂くんの溺愛は危ないことだらけ
「じゃあ……この前、北区で目撃されてたあの噂は、ホント?」
「ああ。暴走族の幹部に声かけられたのは本当だ。それは喧嘩とかじゃなくて、昔の知り合いってだけなんだ。今の連中みたいに、悪い奴らじゃない」
「あ、あの夜も……?」
血まみれの拳が鮮明に蘇って、口をついた。
「水瀬に見られてた時だろ? あれは今いた奴らの仲間。あの夜も、俺のこと血眼になって探してて、見つかった」
「どうして、今も追われてるの?」
「……それは、俺に謝らせたいからだ。アイツらの仲間のトップの男がいんだけど、去年喧嘩になった」
「トップの人と……」
「ああ。そん時に俺にメンツ潰された腹いせだと思う。カッコつかないから、頭下げに来いってしつこいんだ」
「……」
「巻き込んで悪かった」
白坂くんの澄んだ声は真っ直ぐに私へと向けられた。
「怖い思いさせたよな」
「っ、」
恐る恐る私に手を伸ばしてきた。
反射的にピクリと肩が揺れる。
「……俺が怖いか?」
白坂くんの切なげな瞳が微かに揺れた。