壊せない距離
蒼を異性として意識したのはいつから、と問われたら、即答できる。小学5年生の時だ。

小学校で行った、林間学校。滅多に経験できない自然だから、と、夜に肝試しが計画されていた。肝試しといっても、お化け役がいるわけでもなく、ただ暗闇を決められたとおりに歩くだけだったはず。

そんな簡単なルールだったのに、私はグループからはぐれた。

ケータイも持っていない時代で助けを呼ぶこともできず、山の中で一人暗闇におびえながら、誰かが来てくれることを願っていた。

4人1組で肝試しをしていたけれど、一緒にいた女の子が、男子と喧嘩を始めてしまった。
男の子2人が怒って先に進んでしまったから、私ともう一人の女の子で歩くことになった。

「べっつに、あんな奴らいなくても平気だし!」
「でも、やっぱり別行動するのは良くないよ。あとで先生に怒られる。」
「勝手に先に行ったあいつらが悪いんだから、私達は悪くない!」

多分、喧嘩の理由は、小学生にありがちな、ほんとに些細なことだったと思う。
正直、それに巻き込まれただけの私は、あとで先生から怒られることにおびえていた。

もう一人の女の子、紗季ちゃんは、可愛いけれど喧嘩っ早くて、よくこうして男子たちと喧嘩している。

困ったなあ、と思いながら道を進んでいくと、がさっと何かが揺れた音がした。



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