壊せない距離
「きゃああ!」と叫んで紗季ちゃんは私にしがみつき、咄嗟の事で態勢が崩れた私はその場に転んだ。

「あおいちゃん、大丈夫!?」
「う、うん。だいじょう…」

大丈夫、といって立ち上がろうとしたけれど、右足が痛くて力が入らない。

「もしかして、ひねっちゃった?」
「…そうみたい。ごめん。」
「そんな、私のせいだよ。ごめん!でもどうしよう、私がおぶって行こうか…?」

そう言ってくれるけれど紗季ちゃんは私より背の順が前で、身体も小さい。おぶってゴールすることは難しいだろう。

「ごめん、あおいちゃん。私のせいで、こんなことになっちゃって。」
「それはもう仕方ないことだから、良いよ。それより、ちゃんとゴールしなきゃ。」

どうしよう、と考えるけれど、私達は一番最後に出発したグループだ。あとから来るグループはいないから、助けてもらえない。もしかしたら、先に行ってしまった男子がまだ近くにいるかもしれない。

「紗季ちゃん、怖くないなら、先に行って安原君たちを呼んできてくれない?」
「えっ、でも、あおいちゃん一人になっちゃうよ。怖くない?』
「私は暗いのは平気だし、ゆっくり歩きながら進んでいくから。たぶん、安原君たちはそこまで遠くに行ってないと思うし。」
「…分かった。」
「お願いね、転ばないでね。」

うん!と言いながら先の道を走っていく紗季ちゃんの後ろから、ゆっくりと、ゆっくりと右足に力をかけないように進んでいく。


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