壊せない距離
明日からのプログラムは見学だなあ、なんて考えながら、明日の予定を思い返した。

結構な距離を歩いたと思うのに、なかなかゴールにたどり着かない。

それに、紗季ちゃん達も戻ってくる様子がない。

「おそい、な」

暗いのは平気、なんて言ったけれど、ここまで暗い中一人でいると次第に怖い気持ちが強くなってくる。

片足を引きずって歩くのにも疲れてきて、その場にうずくまる。
このまま誰も助けに来てくれなかったら、なんて考えると泣きそうになった。

「だれか…きて…」

その時、来てほしいと願ったのは、たぶん。

「そ、う…」

来るはずがない、だって蒼は違うクラスだ。かなり前に出発して、多分とっくにゴールしてる。今頃友達と仲良くキャンプファイヤーを囲んでいる頃だ。
それなのに、なぜか蒼が頭に思い浮かんだ。

「蒼、助けて…」

来るはずがない、そう思っていた。

「葵!」

少し先の方から、葉っぱや土を踏んで走ってくる音が聞こえる。
男子たちでも先生でもない、そこにいたのは、蒼だった。

「な、んで、蒼が。」




< 12 / 85 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop