壊せない距離
「まったく、あいつらも懲りずに同期会の度に蒼の近く陣取ってるな。」

彼らが見つめた先には、同期の女の子たちに囲まれている蒼。

多分、同期会でこんなに集まっているのも蒼がいるから、というのもあるだろう。
王子様のように扱われている彼は、同期だけではなく、先輩後輩からも人気がある。
会社の飲み会があるといつもこうだ。

「彼氏があんなに人気者だと、困るよねえ。」
「あのね、付き合ってないから。美波、いい加減その間違った認識改めてね。」
「だってよく一緒にご飯行ったりしてるじゃない。付き合ってないって言われる方が不思議だなって。」
「でも、残念ながら本当に付き合ってないんだろ、お前ら。」
「何、堀田なんか知ってんの。」

「だって水瀬と七瀬、俺の先輩と合コンしてたみたいだし。」
「な、何で知って!」

口に入れていたピーチフィズを思わず吐き出しそうになった。凛も同じようで、軽くむせている。

「この前、二人が合コンした相手に俺の大学時代の先輩がいてさ、連絡きたんだよ。その先輩、水瀬のこと気に入ってたみたいだから、食事にでも誘われてるんじゃないか。」
「えー、私じゃなくて葵かあ。残念。で、食事誘われてるの?」
「…あ、うん、さっき連絡来てたかな。」
「返事はどうするの?」
「とりあえず…」

行くつもり、と返事をしようとしたら、頭の上に何かが乗せられた。

「ねえ葵、合コンに行ったなんて、俺は聞いてないんだけど。」

誰がそんなことをしているかも分かっているから、問いには答えず嫌味で返す。



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