壊せない距離
「良いんだってば、凛。」
「好きだよ。」
「「…え?」」

私の疑問の言葉と、周囲にいた同期全員が驚いた声が重なった。
いや、一番驚きたいのは私だ。今、何て言った?

「もちろん、大切な幼馴染だから。変な虫がつくと困るだろ。」
「…それは、異性としては好きじゃないってこと?」
「幼馴染が長かったからな、今更そういう風には思えないよ。」

ビールを飲みながら、まるで今日の仕事は大変だった、とかそんな軽いノリで話していた。


…なんだ、やっぱりそうだ。蒼は、ずっと、私の事を幼馴染としか見ていない。

あの日からずっと、それは変わっていないんだ。

だから、私もいつもと同じ、この言葉で返答する。

「あのね、もちろん私も幼馴染としか思ってないから。いい加減付き合ってるように思われるのも困るんだよね。」

「なーんだ、お似合いだと思ったんだけど。」

周囲に突き付けた事実。けれどそれは、私の心の中に、一番重く突き刺さった。

「葵…」

凛の、何かを言いたげな瞳を見ていられなくて、気づかないふりをした。



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