壊せない距離
あの同期会からずっと考えていた。

このままずっと、叶わずに蒼を想い続けたままで良いんだろうか。
いつか蒼は私じゃない誰かを好きになって、上手くいけば結婚して。
そんな蒼の未来を、幼馴染という関係で応援していくんだろうか。

何度か考えた未来。けれど今ははっきりと答えが出せる。

―――私はその時、心から祝福してあげられない。それなら。

「葵ちゃん。」

はっとして顔をあげると、目の前に座っている潮田祐樹さんと目が合った。
この前凛に誘われて行った合コンの後、食事に誘ってくれた。
今日で2回目だけど、祐樹さんは優しくて、話しやすく会話をリードしてくれる。

多分、世間的にはイケメンと言われる清潔感がある見た目。
28歳で銀行に勤務していると聞いた。
数か月前に彼女と別れてからなかなか出会いもなく、合コンに来たらしい。

「ごめんなさい、ちょっとぼーっとしちゃって。」
「週の終わりだし、疲れてるのかもね。急に誘ったのは俺だから、気にしないで。そろそろ帰ろうか。」

祐樹さんがおススメだというイタリアンのレストランで食事をどうか、と言われたのは今日のお昼頃。

金曜日で特に用事もなかったから快諾した。

けれど、あの同期会以降ふとしたときに蒼の事を考えてしまう。祐樹さんに失礼だと思いながら、残っていたワインを飲み干した。



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