壊せない距離
幼馴染という出会い
水瀬葵と大橋蒼は、幼稚園の年少組で出会って以降、もう21年間幼馴染という関係を築いてきた。

私の誕生日は4月14日。だから幼稚園に入園してすぐに、まだ周りの友達の名前を覚えきれていないときに、みんなからお祝いしてもらった。

先生につられて、まだ拙い言葉でクラスメイトから盛大に「おめでとう」と言ってもらえた。
その様子に、私はびっくりしてしまって泣き出してしまった。

先生が焦って私を慰めようとしてくれたけど、まったく涙が止まらずに先生もびっくりしていたと思う。

クラスメイトには、他の先生達と園庭で遊ぶように伝え、私と先生が部屋に残った。

先生は何とか私を泣き止ませようと、おもちゃを探しに行き、一人部屋にうずくまって泣いていたとき。


『あおいちゃん、あげる。』


突然頭の上から聞こえた、優しい声。

泣き崩れた顔のまま顔をあげると、そこには可愛い顔をした男の子。手には、外で拾ってきたんだろう、桜の枝を持っていた。

『たんじょうびプレゼント。』

あの時の笑顔が眩しくて、嬉しくて。

『ありがとう!』

いつの間にか涙は止まって、私も笑顔になっていた。

帰りに母が迎えに来てくれた時には、嬉しくて『これ、もらったの!』と母に見せてははしゃいでいた。

『あら、良かったわね。誰にもらったの?』

『えっと、えっと。』

そういえば、あの子は私の名前を知っていたのに、私はその時名前を知らなかった。



『あの子!』

ちょうど、母親が迎えに来て話している男の子を見つけた。

そこから母親同士が挨拶を交わして、その男の子の名前が“蒼”だと知る。

蒼の漢字が、私と同じ“あおい”とも読めることから、母親同士は楽しそうに話をして、帰りにお茶でも、とカフェに寄って行った。

あれからずっと、母親同士は仲が良く、自然に私と蒼も一緒にいることが増えた。




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