壊せない距離
大手製菓会社、ムトウ製菓の経理部に所属する水瀬葵、25歳。
大学で経済学を学び、日本大手のムトウ製菓に内定をもらって就職してから2年以上が過ぎた。
学生時代にとっていた簿記やいろいろな資格が役に立ち、経理部に配属されて3年目。後輩に教えられることも増えてきて、仕事が楽しくなってきた。
新人の頃は会社のお金事情を扱うことに不安があって、ミスをしないように注意しながら毎日仕事のことばかり考えていた。金額が合わずに上司に怒られる夢を何度も見た。
それでも経理の仕事はどんどん楽しくなっていき、徐々にミスが減っていくのも嬉しかった。
仕事は順調だ、仕事は。けれど全てが上手くいくはずもなく。
「葵。」
低いけれどよく耳に通る澄んだ声。昔は私より可愛く高い声だったのに、可愛げのかけらもなくなった幼馴染。
その声だけで誰だか分かるのも、幼馴染だから、というわけではないんだろう。
パソコンから顔を上げて声の主を見る。
大学で経済学を学び、日本大手のムトウ製菓に内定をもらって就職してから2年以上が過ぎた。
学生時代にとっていた簿記やいろいろな資格が役に立ち、経理部に配属されて3年目。後輩に教えられることも増えてきて、仕事が楽しくなってきた。
新人の頃は会社のお金事情を扱うことに不安があって、ミスをしないように注意しながら毎日仕事のことばかり考えていた。金額が合わずに上司に怒られる夢を何度も見た。
それでも経理の仕事はどんどん楽しくなっていき、徐々にミスが減っていくのも嬉しかった。
仕事は順調だ、仕事は。けれど全てが上手くいくはずもなく。
「葵。」
低いけれどよく耳に通る澄んだ声。昔は私より可愛く高い声だったのに、可愛げのかけらもなくなった幼馴染。
その声だけで誰だか分かるのも、幼馴染だから、というわけではないんだろう。
パソコンから顔を上げて声の主を見る。