壊せない距離
なんとか蒼を部屋に連れて行ってベッドに寝かせた頃には、今から走っても終電には間に合わない。

「仕方ない、か。」

何度目か分からないため息をこぼして、蒼の隣に横になる。

昔はよくこうして同じベッドで寝ていたな、と思い出す。

幼稚園のお泊り会は毎年隣で寝ていたし、小学校の低学年くらいまではお互いの家によく泊まりに行っていた。

それまでは本当に、兄弟みたいに育っていた。
変わっていったのは多分、小学校高学年くらいから。

いつまでも仲が良い私たちに、男子は冷やかすような言葉をかけてきたことに恥ずかしくなって、私が蒼を男の子と意識して。

それから林間学校があって。蒼のことが好きだと思ってからは今まで通りなんてできなくて。
それでも、幼馴染という関係を壊さなければちょうど良い距離を保てることを知った。

まさか大学まで一緒になるなんて思っていなかったけれど、考えて当然かと思う。
中学までは一番近い公立だったし、高校は近場で上位を狙うと自然にそこになる。
大学は、学部が違っても私は経済、蒼は経営を学ぶことを考えると、どちらもこのあたりで有名なのは決まっていたから。

それでも、これから先就職したら蒼と離れていくのかな。

そこで、好きな人が出来て、結婚して。私は、それを受け入れて祝福できるんだろうか。
一瞬でも考えてしまう。蒼も私のことを想ってくれているんじゃないか、なんて。

今まで蒼に彼女が出来たのを見たこともないけれど、好きな人がいるとは聞いたことがある。
自分に都合の良い考えが頭を過る。



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