壊せない距離
「あおい、俺のこと、好き?」
「な、に、突然…」
「こたえて。」

先の自分に都合の良い考えが、再び頭を過る。

―――蒼も私のことを想ってくれている。

「…好きだよ。蒼のことが、好き。」

そう答えたときには、また唇が重なっていた。

さっきのとは違う。開いていた私の口の中に蒼の舌が入り込んできて、私のものを絡めとられる。

「…はぁ…っ。そ、う…」
「あお、い…っ。」

一瞬離れたと思った唇は、何度も何度も、角度を変えてキスを落とされる。

蒼から落とされた吐息を肌で感じられるほどの至近距離。

キスをしながら蒼の右手はゆっくり私の服に触れていた。

「あおい、いい…?」

初めてのキスで、すでに息も絶え絶えに私は言葉を発することなんてできなくて。
でも、蒼とならこのまま続けても良いと思えるから、小さく、頷いた。

ふっ、と笑った蒼はゆっくり私の着ていたワンピースを脱がせていく。

小さい頃は何度も見せた身体だとしても、大人になってからは男の人に見せたことはないからとても恥ずかしい、けれど、蒼になら、と思えた。

振り落とされるキスが唇から、首筋へ、鎖骨へとゆっくり降りていく。

蒼が触れた全てが熱を帯びて、お酒でも酔えない私の頭を、ゆっくりと溶かしていく。

その後はほとんどされるがままだった。

けれど蒼が優しく触れてくれるたび、初めての痛みなんて感じなかった。

事の時間はそんなに長くなかったと思うけれど、初めてを経験した私が果てるのは一瞬で。

「あおい…」

優しく呟かれた言葉を聞いて私は意識を手放した。



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