壊せない距離
ドクン、と心臓の脈が速くなるのを感じた。嫌に胸騒ぎがする。どうして、だろう。
まさか、蒼がそんなこと、あるはずない。

「昨日のこと、覚えてないの…?」

確認したかった。覚えていて欲しかった。けれど―――

「ごめん、居酒屋出たあたりからほとんど覚えてないんだよ。もしかして、終電逃した?」

嘘、でしょう。昨日のこと、何も覚えていないの。


もしここで私が全てを話して、蒼が記憶にないままあんなことをしたって知ったら―――

もう、幼馴染ではいられない…?



「…おい、あおい。」

はっとして、蒼を見る。

「あ、うん。蒼が、歩けないって、それで。近くにあったここに入ったの。」
「そっか。迷惑かけてごめん。俺結構お酒弱いんだな。」
「ほんと、そうだよ。だから早いうちに、やめなさいって、言ったのに。」

何とか返事をできているけれど、顔は引きつっているかもしれない。
それより、これから蒼と普通に関わっていけるのかな。

「悪かったって。これからは気を付けるよ。葵と一緒に飲めるって嬉しくて、ハメ外しちゃっただけだから。」
「…そう。」



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