壊せない距離
床に落ちていたジーンズを拾い上げて、さらに蒼は続けた。

私の大好きな笑顔で、それでいて、私にとって残酷な言葉を。

「でも、葵だったから良かった。葵とは何も起こらないだろうから、安心できる。」

あぁ、そういうことなんだ。

昨日、私に好きだと言ったあと。蒼は何も言わなかった。

蒼は私のことを、何とも思っていない。昨日は、ただの、過ちだ。


蒼から求められるのが、幼馴染という関係なら。

私がそれを壊そうとしたら、もう、一緒にはいられない。

蒼への想いを消すことを決意したのは、この時だ。


「本当に、私だったから良かったものの。いい加減、暑いと服を脱ぐ癖、やめなさいよ。恥ずかしい。」


幼馴染としての、模範解答を―――




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