壊せない距離
数日後、部長から退職届が正式に受理されたこと、有休消化も含めて3月の第2週で勤務を終えて良いことを伝えられた。
3月13日が、最終出勤日。

その間に、出来る限りのことは進めていくつもりだ。

ただでさえ年度末で経理部は多忙を極めている。

こんな時に退職を希望するのも部署のみんなに申し訳ないと思うからこそ、割り振られた仕事はこれまで以上の速さで、けれど正確に進めていった。

毎日残業をして本来の自分の役割を終えられるように処理をする。

けれど今日は定時で終わらなければいけない。

凛から呼び出しがかかったから。
やっぱり、人事部は黙っていられないよね。

『今日、絶対定時で。いつもの店ね。』

問答無用という圧力が読み取れるメッセージが昼休みに届いていた。

さすがに、凛には隠せそうにもない、か。

何とか定時に仕事を終えて、凛と約束したいつもの個室居酒屋に向かう。

到着したころには凛も席に座っているけれど、何もメニューが届いていないところから少し前に来たんだろう。



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