壊せない距離
引っ越しはあっという間に終わった。元々荷物は少ない方だし、要らないものはこれを機に捨ててしまったから、家具家電と段ボール数箱で荷物はまとまった。

朝の9時から行われた引っ越しも、引っ越し業者が去るころには10時過ぎ。

何もなくなった部屋を見て、本当に引っ越すんだと実感する。

実家を出た頃もそんな感じだったかな、と思い返して、近くのカフェで遅めの朝食をとることにした。

蒼との約束まで、あと7時間。

カフェを出た私は、その足で近くの百貨店に足を運んだ。
有名ブランドの店に立ち寄り、目的のものを探す。

掌に乗ってしまうほど小さく、軽いそれは、蒼への誕生日プレゼント。
離れる前にそんなものを渡すのも面倒かと思ったけれど、最後まで幼馴染でいると決めたから。
それに、蒼との別れの意味も込めて。



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