壊せない距離
彼女が男子に意地悪されていたらすぐに助けに入った。

彼女が友達と喧嘩して落ち込んでいたら励ましながら帰った。

彼女が親に叱られて公園で泣いていたら隣で慰めた。


そして、林間学校で彼女だけがゴールに帰ってこなかったとき。

一緒のグループだったはずの男子に、掴みかかる勢いで問いただした。

そしたらその後、走ってきたもう一人の女子から、彼女が怪我をして歩けなくなったと聞いた。

それを聞いた途端、止める先生の言葉も耳に入らず、彼女を探しに行った。

自惚れかもしれない、けれど、彼女が俺に助けを呼んでいる気がした。

彼女を見つけたときうっすらと泣いていて、もっと早くに来れなかった自分に腹が立った。

中学のとき、高校のときも変わらず、彼女のそばにいた。

クラスが違って、部活や塾もあって、小さい頃に比べたら時間は減ってしまったが、一緒に帰れるときは帰ったし、忘れ物をしたと嘘をついて、何度か彼女に会いに行った。

変にモテていたらしい俺のせいで彼女は俺を避け始めた頃から、彼女との関係を考え始めた。

彼女が俺のことを好きだと思ってくれていたら何も問題はないが、もしそうじゃなかったとき。

俺たちは元の関係に戻れなくなる。


幸せの可能性と、恐怖の可能性。どちらかを天秤にかけたとき。
俺は、壊れない幼馴染という関係を選んだ。

それに、幼馴染だから、というと、彼女は安心したように笑うんだ。

それがいつしか、お互いの約束のようになっていた。

それからは、彼女のことは幼馴染だから、と言い訳をして、だが彼女に近づく男子をできるだけ遠ざけた。



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