壊せない距離
「ありがと。しばらくチョコレートを買わなくて済みそう。」
「そうやってチョコばっかり食べてると太るぞ。」
「別に、私が太ったからって蒼には迷惑かけないでしょ。」
「まあ確かに、太っていようが痩せていようが、葵は葵だもんな。」
「…そういうこと。」

蒼はいつも、相手の中身だけを見ている。見た目や周りの評価なんて気にしないで、自分が正しいと思う人、ものを信じて関わっている。
それが本人以外にとってはどれだけ大変なのか、多分知らない。

「そういえば、いい加減職場で葵って言うの、止めてくれない?付き合ってるのかっていまだに勘違いされてるんだから。」
「終業前だったし良いかなと思って。」
「就業中は苗字で呼び合うって決めたでしょ。1年目の頃から全然守ってくれてないんだけど。」

「まあそのおかげで、葵に変な虫がついてないんだから、俺としては良かったと思ってる。」
「あのねえ、私の恋愛を邪魔しないで。もう25なんだから、そろそろ本気で将来を考えたいの。」
「…葵のことを見守るように、葵のお母さんからも言われてるからな。仕方ないだろ。」

蒼のことは好きな一方で、嫌いなところが一つある。私に対して過保護すぎるところだ。

自分は好き勝手に恋愛してるのに、私が誰かから告白されると、ことごとく邪魔をする。
おかげで今まで付き合えた人なんていないし、経験も、一度だけ。

「見守ってるんじゃなくて、邪魔してるの。とにかく、次からは余計な事をしないでよ。」
「分かったよ。でもその代わり、付き合うのは俺が認めたときだけな。」
「何も分かってない!私の恋愛関係に口は出さないこと、絶対だから!」




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