壊せない距離
あの後、すぐに蒼は支払いを済ませて、Barから程近い、ビジネスホテルに私を連れて行った。

すでにチェックインは済ませていたようで、受付に寄ることなく部屋へ向かう。

「ねえ、蒼。」

何度話しかけても、蒼は答えてくれない。

ルームキー代わりのホテルの会員証をかざして、鍵を開ける。
部屋へ入るなり、蒼は後ろから私を抱きしめる。

「やっと、触れられた。」

驚くのと同時に、耳に蒼の吐息が触れてくすぐったい。

「っ…ねえ、蒼。やっぱり、シングルの部屋に2人いるのはまずいんじゃ…」

そんな私の訴えは無視して、蒼の唇が私のものに触れた。


あの日から、2度目のキス。
正確には、あの日に何度かしているから、2度目ではないけれど。


唇が離れ、はぁ...と息をこぼすと、その瞬間を狙ってまた唇を塞がれる。

あの時と同じ、今度は蒼の舌が入ってきて、私のものを絡めとる。

次第にお互いの息遣いは荒くなって、呼吸が乱れる音だけが静かな暗闇に響いて聴こえる。

何度も何度も、角度を変えて紡がれるキスに私の身体も酔っていく。

キスだけで力が入らなくなった私の身体を、軽々と蒼は抱き上げた。



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