ねえ、知ってる?【下】
誰がどう見ても「付き合っていた」と思う。
「好きだ」と伝えると、菜都美ちゃんもたまに「私もだよ」と返してくれていた。
あの日までは、この幸せがずっと続くと思っていたんだ。
ーーー
「・・・・・・・・・菜都美ちゃん、何してんの・・・?」
まだ少し暑さを感じる九月も終わる頃。
その日、俺は菜都美ちゃんにデートをドタキャンされた。
こういうのは前からたまにあった。
一緒に買い物に行きたかったのだが、仕方ないと思って一人で出かけていた。
『バイトが入っちゃった』と言っていたはずの菜都美ちゃんが、私服で男の人と手を繋いで歩いていた。
時が止まった。
横にいたのは、俺の通っていた学習塾でバイトをしていた、菜都美ちゃんと同い年の男だった。