ねえ、知ってる?【下】



 女の子に笑顔を向けられる度に、「ああ、こいつも俺を裏切るんだ」と思った。


 俺は寄ってくる女の子と遊びまくった。


 愛なんて感情はもう失った。


 簡単だった。


 何を言えばその人が喜び、何を言えば好かれるかもなんとなくわかった。


 別にフラれても痛くもかゆくもなかった。


 元から好きでも何でもない。


 次に遊ぶ相手を探せば良いだけだ。


 楽だけど、自分を失っていくのがわかった。


 もう誰かを本気で好きにならない。


 ずっとそう心に決めていた。


 それなのに、こいつ。


「初め・・・まして。新田苗です。よろしく・・・・・・」


 とってつけたような笑顔で自己紹介したこいつ。


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