ねえ、知ってる?【下】



 気持ちがなくてもそんなことは出来る。


 26歳にもなると、覚えなくても良い色々なことを覚えてしまった。


 なんなら、本気で思った誰かとそういうことをしたことはない。


 俺は美舟を山さんに紹介して、美舟はすぐに一緒に働くことになった。


 ちょうど、アルバイトが一人辞めたので良いタイミングだった。


 美舟はお金を貯めて一人暮らしが出来るようになるまで、俺の家に住むことになった。


 第一印象はツンツンした女だったけど、一緒にいる時間が増えるに連れて美舟のことが色々わかってきた。


 確かにお嬢様だけど、美舟は誰かをバカにしたり、見下したりはしない。


 家事も出来るし、本当は明るい性格。


 すぐに美舟と付き合うことになった。


 別にその当時気になる子がいた訳でもなかったし、断っても美舟に行く当てがない以上、一緒にいないといけないと思った。


 そのくらいの理由しかなかったので、「とりあえず」で付き合った。


 美舟がこんなクズな俺のことを本気で好きになる訳もないだろうと思ったし、どうせ25歳になったら家の人に実家に引き戻されるだろう。


 それまでの間だけ、遊ぶかと思っていた。


 でも違った。


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