ねえ、知ってる?【下】



 それなのにフラれた今でも、脳裏に雅暉さんが浮かんでしまう。


 やっぱりまだ雅暉さんのことが好きなんだ。


「はい、お待たせ! フレンチ二つとブレンド二つね」


 そんなことを考えている内におばちゃんが運んできてくれた。


「おお・・・・・・。相変わらずうまそー・・・」


「ふふ。苗ちゃんがまさか彼を連れて来てくれるようになるなんて、びっくり! ごゆっくりね!!」


「あ、いや、あの・・・・・・」


「ははっ。いただきます」


「え、ねえ、大和くん・・・・・・・・・!!」


 私は『彼』じゃない、と言えなかったことが気にかかっていた。


 ここには土日、たまにお母さんとも来る。


 もし、おばちゃんがこのことをお母さんに話したりしたら、と思うと焦った。


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