ねえ、知ってる?【下】
心を落ち着かせて扉を開いた。
入ってすぐ、キッチンにいる雅暉さんと目が合った。
準備をしていたとは言え、いきなり雅暉さんに会うとは思いもしなかった。
「あ・・・・・・」
「苗ちゃん。おはよう」
「っ・・・・・・。お、おはようございますっ・・・!」
笑顔はいつもよりぎこちなかった気がした。
自分もちゃんと笑えていた自信がない。
声が震えそうになるのを必死に抑えた。
ダメだ。
まだ一瞬で好きだと思わされる。
私はそれだけ告げ、奥にいる空さんにも挨拶をした。
更衣室にある鏡で自分の顔を見ると、ちっとも可愛くなかった。
うまく笑えていない。