ねえ、知ってる?【下】
美舟さんが行ってしまってから、私たちはしばらく無言だった。
去って行く美舟さんに何も声がかけられなかった。
沈黙を破ったのは空さんだった。
「聞きたいことはたくさんあるんですけど、何があったんですか?」
「美舟にかけおちしてくれないかって、言い出されてね」
「かけ、おち・・・・・・?」
「うん。もう婚約は破棄して家も捨てて、俺と生きたかったんだって」
「じゃあ、なんで帰っちゃったの・・・?」
「うん・・・・・・・・・。俺もまだ美舟が好きだよ。俺もずっと美舟と一緒にいたかったよ」
その言葉に胸が痛くなった。
やっぱりまだお互いにお互いを思い合っている。
「美舟は覚悟を持って会いに来てくれたけど、俺ももう覚悟しちゃったから」
「覚悟って、何ですか・・・?」