医者嫌いの彼女

信じられないっといった顔をするが、
そのまま続ける。

「昨日、京介と一緒に会いに行ってきた。
こないだの一件を聞くために。
最初は関係ないと言っていたが、京介が
脅迫だったと警察に行くと言い出してな…
まぁ、最終的に認めたって形なんだけど。」

亜妃「そっか…。和弥さんはさ…どこまで知ってる？」

亜妃は何をそんなに怯えているのか？
俺に知られたくない事でもあるのか…

「…詳しいことは聞けなかった。」

亜妃「だよね、あの人が言うわけないもん。あのね…
私、和弥さんと付き合っちゃいけなかったの。」

「はっ？」

亜妃「昔、あの人に言われたんだ…
医者に罹ろうなんて思うなって。
お前は医者とは関わっちゃいけない人間だって。
病院だと保険証とかで関係がバレる可能性が
あるんだよね？」

昔の事を思い出すように、少しずつ、でも
はっきりと言葉を発する。
何を言っているのか、半分理解ができないまま
耳を傾けるしかなかった。

亜妃「子供の頃は意味がわからなかったけど…。
結局…あの人は自分が1番大事だから、
私という存在自体を消したかったんだと思う。
この前…会った時にまだ生きてたのかって
言われたくらいだしね」

その発言を聞いて、喘息の事
やっぱり知っていたのか？と思う。

思わず眉間に皺がよる。

亜妃「お医者さんと付き合ったら、こうやって
あの人に会う可能性だって考えられたのにね。」
悲しそうに力なくほほえみながらそう言う。

病院に対する拒否反応はこれか。と
今になって全てが繋がった気がした。

そして…次に亜妃から発せられた言葉に
言葉を失う。

「…多分これ以上付き合ってたら和弥さんに
迷惑がかかる。あの人は何をするか分かんない。
だから…別れてください。」

「……。」

亜妃「…いっぱい迷惑かけてごめんね。
今まで本当にありがとう。」

「……。」

黙ってしまった俺に対し、亜妃は話を進める。

亜妃「あ、入院費とかはちゃんと働いて返すから。」