医者嫌いの彼女
この状況でも入院費なんて話ができるのか…

こいつの頭ん中は自分の気持ちより、
他人がどう思うか、どう思われるかって事に
支配されている気がする。

募る苛立ちから思わずため息がでる。

「はぁ…何勝手なこと言ってんだよ。
てか、俺の気持ちは完全無視なの?
大体さ、俺と付き合うのと、お前の父親と
何の関係があんだよ?」

亜妃「あの人は私の存在自体を消したいの。
…多分だけど、もしかしたら子供の頃から
喘息があったの知ってて病院に行くなって
言ってたんじゃないかと思う。
私が…生まれてきた事自体、罪みたいなものだもん。
和弥さんの存在も知ってしまったし、
私と和弥さんの関係まで知られたら…
本当に何するかわかんない。
和弥さんが医者として、なにか不利益を
被ってからじゃ遅いの。
だから…それだけは避けたい。
私は1人で大丈夫。和弥さんにはもっと
ちゃんとした人と付き合って欲しい。
私なんかじゃなくて。」

春川医師の言葉を思い出す。
喘息の事は知らないと言った。
でも亜妃の口ぶりからすると、
知っていたのか、とも思う。

ー『生まれてきた事自体、罪みたいなもん』ー
亜妃の言葉が頭の中を駆け巡る。

「…ふざけんな。生きてるのが罪って何?
訳わかんねぇ事言ってんなよ。」

今までずっとそう思いながら生きてきたのか?
どう育てられたら、20歳そこそこの子が
こんな事言えるのか。

腹立たしくて仕方がない。

和弥「…お前が父親からどんなこと言われて
生きてきたかしらねぇけど、父親との関係が
バレるとまずいから医者と付き合ったら
ダメってか?人の恋愛なんて他人がどうこう
できる問題じゃないだろ。…そもそも、
お前を捨てた時点で縁は切れてんだから、
そんなの気にしても仕方ねぇだろうが。」

亜妃「そうかもしれないけど。でも…」

「でもじゃねぇ。
てか…お前の父親には話してきたから。」
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