医者嫌いの彼女
亜妃「な…何を?」

「俺と亜妃が付き合ってることも、
同棲してることも。」

俺がそう言うと、信じられないといった顔。
わずかに顔が強張るのがわかる。

…だったら、俺がその恐怖を除いてやる。

「結局さ、春川って名前で生きてるから
そうなるんだろ?お前も、お前の父親も。
だったら、苗字変えてやるよ。」

亜妃「えっ…」

何を言っているのか分からないと言う顔を
しているのを見て思わず笑いそうになるが、
堪えて言葉を続ける。

「結婚しよう」

亜妃「へっ…け、結婚…?」

まさかこの場面で結婚ってワードが出てくるとは
思わなかったのだろう。

恐らくこいつの頭の中は?で溢れかえっているはず。
その証拠に、鳩が豆鉄砲を食ったかのような
顔をしている。

「結婚してしまえば、春川じゃなくなる。
お前がいつまでもそうやって父親に縛られてるんなら、
俺が解放してやるから。」

亜妃「ちょ…ちょっと待って。そんな…
私のために和弥さんの人生壊すわけには
いかない。」

そう言われて、少し恩着せがましかったと
思いなおす。

和弥「いや、言い方悪かったな。
でも、別に人生壊されるつもりはねぇけど。
そりゃタイミング的には、亜妃が大学卒業して、
落ち着いたら…くらいには思ってたけど、
…俺が決めて、俺がそうしたいと思って
言ってるけど?」

俺はもう30だし、年齢的にいつ結婚したって良い。
ただ亜妃はまだ21歳。
学生だし、やりたい事もあるだろうし
家族の事だって何かしらの事情がある事も
想像できたから急ぐ必要はないと思っていた。

でも事情を知った今、こいつがこんだけ苦しみ
悩まされていて、それを取り除いてやれる術が
あるなら今すぐにでも解放してやりたいと思った。
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