医者嫌いの彼女
各々喋り始めて1人酒を飲む。
すると、亜妃と呼ばれていた女が目につく。

さっきから変な咳してんな…

咳が出るのを気にしてるのか、ハンカチで口を
おさえたり、ちょいちょい席を離れたりしている。
それでもワインはそれなりに飲んでいるようだ。
しばらく気にしない振りをして飲んでいたが、
徐々に明らかに様子がおかしくなってきている。
顔が赤く、足取りもフラフラしているように見える。

まさか…酔ってんのか?

そう思って声をかける。

「…お前、そんな飲んで大丈夫?顔赤いけど」


声を掛けると驚いたような怖がったような
何ともいえない表情で振り返り、酔ったような
見た目とは違い、割としっかりと返答が返ってくる。

亜妃「…だ、大丈夫です。
…でもちょっと飲み過ぎちゃったみたいで。
すみません。私もう帰ります。お先に失礼します」

そう言うと早々と店を出て行く女。
何となく気になって後をついて出て行く。

「…酔ってんだろ?どうやって帰るんだ?」

亜妃「あ、ゆっくり歩いて帰るので大丈夫です」

酔ってんのに歩いて帰るとか、とんでもない事を
言い出す。

「…送る。」

気付いたらそんな事を口走っていた。

普段なら絶対にこんな事しない。
この後厄介な事になるとわかっているから。
ただ、なんとなくこいつはそのままに
しておくとまずい気がした。

…が。

亜妃「いえ、大丈夫です、すぐ着くので。
あの…私は大丈夫なので…戻って下さい。
今日はありがとございました‼︎」

そう言って離れようとするその女。

正直意外だった。過去の経験からすると
こういう時、大概の女は喜んで送って貰う
と認識していたが、そうじゃない女もいるらしい。
そう拒否られると無理についていくつもりもない。

「じゃ、家着いたら連絡して。
これ俺の連絡先だから」

気にはなるため念のため連絡先を渡す。

亜妃「…はい」

メモを渡すと受け取って亜妃は帰っていった。
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