医者嫌いの彼女
ピンポーン

チャイムを鳴らし、しばらくすると扉が開く。
   
それと同時にポロポロと涙を流し、
固まっている亜妃。

「…とりあえず、上がっていいか?」

そういうと頷いて、部屋に入れてくれた。

「やっぱり発作おきたか…」

亜妃「…やっぱり?」

「なんとなく、怪しい呼吸してたからな。
吸入して少しマシになったと思ったんだけど…」

もう少し、ちゃんと様子を見とくべきだった。

「今は?息苦しさとかない?」

亜妃「…大丈夫です。」

少し屈んで亜妃と目を合わせる。

「顔色あんま良くないな…まだ少し怪しいかな。」

すると、泣きながら抱きついてきた亜妃。
こんな行動をとるなんて…よっぽど怖かったのか。

亜妃「怖かった。…来てくれてありがとう
ございます…。」

消え入りそうな声でそう言う亜妃を抱きしめ返す。

「…連絡してきてくれてよかったよ」

こうやって頼ってくれるなら、それでいい。

しばらくそのまま頭を撫でてやるが…。
全然泣きやまねぇな。

「もう、泣きすぎ。苦しくなるぞ」

それからひとしきり泣くと落ち着いたのか、
俺から少し離れる。

亜妃「…グスッ…も、大丈夫…です。」

「ん。落ち着いたならよかった。
もう遅いし、寝たほうが良い。」

亜妃「……はい」

発作が起きたなら体力も使ってるから
早く寝せた方がいい。

時間も時間だし、本人も辛いだろうしな。

そう思って声を掛けたが、
対照的に俯いたままその場を動こうとしない亜妃。

まだ怖いか。無理もないが…

「はぁ…。はい、ベッド行くよ」

亜妃を抱えベッドまで連れて行く。
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