二人
「一さまは素晴らしい方よ。でも私はそういう主義だけは嫌よ。多分他のお手伝いたちもそう思ってるはず」
垣野さんと愛さんはそう言いながら、控室のカーテンの向こうで着替え始めた。
俺にはTシャツとジャージを貸してくれた。
「今年一度ね、あなたみたいに茶髪でチャラチャラした感じの女の子がお手伝いのバイトを希望してきたの。その子、愛さまの小学校の時のお友達でね」
垣野さんは息をふぅと吐き、一度間をとって言った。
「これから話す事が、愛さまを深く傷つけたのよ」
仕事服に着替えた垣野さんがカーテンをシャーッと開け、愛さんはワンピースに着替え終わっていた。
「その女の子、愛さまとすごく仲良くしてくれてて、愛さまをよく理解してくれる子だったのに…」
「のに…?」
「一さまはその子を一目見ただけで、いきなり殴って、お前みたいなクズはもう愛とは関わるな、って怒鳴りつけて…。それからその子は愛に会ってくれないの。本当に良い子だったのにね…」
そして垣野さんは、愛さんを抱き締めた。