二人

「ありがとう。わざわざ洗ってくれて」



「いえ。迷惑かけたのは俺の方だから…」



そう話しながら俺は服を手渡した。
その人はその服をかたしながら話し始めた。



「あなたの話は垣野さんや愛さまから聞いてるわ。愛さま、あなたの話になると、すぐ笑顔になられてね、久しぶりに笑顔を見たものだから、びっくりよ」



素直に嬉しかった。

俺は今まで人を笑顔にさせようとかしなかったし、思いもしてなかった。

知らない内に人を喜ばすことができるのは嬉しい。


一通り話を聞き終え、俺が帰ろうとした時、



「私たちお手伝いは、一さまの、見た目だけで判断する考えには賛成できないの。愛さまを笑顔にできるのはあなただけ。私たちはいつでも協力するから来てちょうだいね」



「わかりました。時間を見つけて来ます」



「助かるわ。じゃあ愛さまと垣野さんに伝えておくわ」



そして俺は家を出た。
いつもより足取りが軽いのが分かった。

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