二人
俺らは城崎家を後にした。
終始無言の帰り道だ。
俺の家の前で、京が口を開いた。
「愛ちゃん、大丈夫かな?」
「大丈夫だよ。垣野さんまであの親父俺の番号知ってることなんて気付いてなかったし。連絡しようと思えばできる」
「そうだけど、今まで以上に会いづらいじゃん。愛ちゃん、お前のこと、本気で好きなんじゃないかって思うんだ。悲しむよ」
「愛が、俺を?」
「うん。俺と大樹への態度が違った。でもさ、大樹には美波ちゃんがいるし…。まぁ、愛ちゃんのことは出来る限り支えてあげろよ」
「…うん」
「俺も薫ちゃんに会いたいしな」
「お前はそこかよ!!」
「まあな。じゃあ明日」
「おう。たまには家にも帰れよ」
京は、片手をあげて暗闇の中に消えていった。
そんな京の姿を見て、思った。
俺には美波がいる。
でも今は愛を守りたいという気持ちも芽生え始めている。
心がモヤモヤし始めながら、俺は家に入った。