二人

美波は今まで見たことないくらい顔を真っ赤にして、叫んでいる。

俺は心臓がバクバクしていた。



「…それでもあたしは大樹に裏切られた!」



「…違う!俺は…」



「何?じゃあこいつが大樹を誘ったの?」



美波は愛の頬を思い切りつまみ、愛にこう怒鳴りつけた。



「大樹にはあたしがいるの。大樹につきまとわないで。大樹に迷惑!!」



そう怒鳴るなり、愛に見せつけるように、俺に口付けた。
そして鞄を抱えて足早に去っていった。

愛の目が見えなくて良かった、とこの時初めて思った。

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