月姫の祈り
でも、ふと思う。
月は、私の事をどう想っているのだろう?……と。
同じ里の幼馴染で同じ歳。気付いた時から当たり前のように傍にいたから、改めて互いの気持ちなんて確認し合った事なんてない。
それに、月が優しいのは私だけにではない。彼は老若男女全てに優しくて、里の人気者だった。
「……桜?どした?具合でも悪いのか?」
「えっ?!あ、っ……ううんっ」
ついついじっと横顔を見つめていたら、私の視線に気付いた月と間近で瞳が重なった。
彼の瞳は私と同じ黒なのに、まるで水晶のように不思議な輝きを持っている。いつももっと見ていたい、って思うけど、恥ずかしくて直視できない。
「そ、そう言えば!月はなんかお願い事ないの?」
「え?」
「ほ、ほら!もう長い事一緒に居るのに、月は私に一度もお願い事を言わないでしょ?何かないの?」
それは照れ隠しに、咄嗟に思い付いた質問だった。