月姫の祈り
けれど、私の質問に黙ってしまい、考え込む彼を見て思い出す。
月はいつも里のみんなの為に一生懸命で、みんなが嫌がりそうな事や大変な事を率先してやる人。お腹を空かせた子供に遭ったら、自分も空腹でもその子供に食べ物をあげる。そういう人だ。
王様とは違う、正反対の無欲の塊。
そんな彼だから、本当は誰よりも幸せになれる願いを叶えてあげたいのに……。
「ね?何かない?」
「……いいんじゃない。今のままで」
「えっ?」
「戦で命を落としたり、身体に不自由がある人もたくさんいるだろ?そんな世の中で、五体満足で、毎日生きてる。
……これ以上欲出したら、神様に怒られるよ」
そう言って、月は微笑った。
その笑顔にキュンッとしながらも、すぐにハッとして私は首を横に振る。