月姫の祈り
月、貴方は幸せにならなきゃ。
人にあげた幸せの分、幸せにならなきゃ。
ーーねぇ!月ーーッ!!
そっと触れた彼の頬は、潮風に撫でられて、少しずつ冷たくなっていった。
それは、その身体から、命の灯が消えた証。
それを確信した瞬間。
私の心に、いつもの満月の夜とは違う、ドス黒く重い力が、湧いた。
「……。し……じゃえ」
「は?」
「みん、な、……しん、じゃえ」
真っ直ぐに生きて、綺麗な心で生きて……。それなのに幸せになれない。
悪人が笑う、そんな世界なら……。
いっそこんな世界、失くなってしまえばいいーーーーーッ!!!!!
「みんなッ……死んじゃえーーーーーッ!!!!!」
抑えていた憎悪が、溢れ出すーー。
叫んだ瞬間。
私の中に宿った能力が、願いを叶える。
こいつらに殺された、みんなへの復讐。
愛おしい人を失くして、もう私の心を抑え込めるものなんてなかった。
みんなの……。
月の、仇を討ちたいーー。
その強い想いが届いて、全てを壊す。
ゴゴゴゴッ……!!!!!と響く激しい地鳴りと振動に、その場にいた者が悲鳴をあげながら慌てふためいた時にはもう遅い。
海から押し寄せた津波が、あっと言う間に、港町ごと包み込んでいったーー。