月姫の祈り
第3章
(1)
いつだったか、月が言った。
……そう。
あれは、里の長が亡くなった時。
私の能力は、亡くなった人には使えない。
満月の夜でも、悲しむご家族や里のみんなの為に、奇跡を起こしてあげる事は出来なかった。
みんなの悲しみを取り除いてあげられなくて落ち込む私に、月が言った。
『永遠の命なんて、なくてもいい。
だからこそ、人は今を楽しんだり、何かを愛しいと想ったり……。全てを大切に出来るんだ。
だから、誰かの心に残る事も出来るんだ』って……。
貴方の言う通り、貴方は私の心に残った。
私は一生、貴方の事を忘れない。
ーーでも、これでいい筈ない。
貴方がこのまま終わっていい筈が、ない。