月姫の祈り
(彼を今のまま生き返らせる事は出来ません。
しかし、その魂を新たな器に、別の時代に……。来世へと導く事は出来ます)
「……来、世?」
(はい。けれど、来世での彼は別人です。見た目も名前も違う。魂は同じですが、全く別の人間です。
……今までの、月としての記憶は一切失くなります)
「……」
(想い出も、記憶も……。来世へは何も持っていけません。
それでも、構いませんか?)
無言で、眠ったような月の顔を見つめていた私に、謎の声が尋ねる。
謎の声と話している間は、いつも私が満月の能力を宿す時と同じ暖かさが持続していた。
何度も何度も私を助けてくれた能力。この謎の声の言う事を疑う余地は、私には全くない。
そんな私の想いを察してか、謎の声は言った。