月姫の祈り

(そして、残念ながら貴女は……彼と一緒に生まれ変わる事は出来ません。
不運な事故、とはいえ、たくさんの命を奪った貴女に……。今、来世へと開く扉は、ありません)

「……」

(罪を償う方法はありますが、容易いものではありません。何百年、何千年かかる事も……。
仮に生まれ変わる事が出来ても、彼ともう一度出逢える可能性はとても低い。運命の神によって遮られ、かなり困難な道になるでしょう)

「……。そう、ですか」

嘘偽りないと感じる言葉。

ーーでも。
その言葉を聞いて、私の心は決まった。


「……お別れだね、(げつ)

彼の左手を取って、自分の頬に引き寄せた。
そっと目を閉じて、来世の貴方を想像するーー。

きっと、その綺麗な心をそのまま姿にしたように美しい人に違いない。
力強くて、優しい眼差しは、変わらないでほしいな。
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