月姫の祈り
しかし、この来世は謎の声の説明いわく前途多難。
運命の神によって遮られている俺と桜が交われるこの道は、何かある度に試練が付き纏う波乱の人生らしい。
しかも、絶対に逢えるという保証はない。
……でも、ゼロじゃない。
例え1パーセントでも桜に逢える可能性があるなら、俺は行く。
あいつの罪を、俺も一緒に背負ってでも……。
(そんなに、あの娘が大切なのですか?何故、そこまで貴方はあの娘を……?)
ーー何故?
確かに、そう問われたら分からない。けど……。
「気付いたら、あいつでいっぱいだったんだよ。寝ても覚めても、昔も今も、な」
理由なんて、分からない。
答えなんて、きっと初めからない。
ただ、気付いたら俺の心の中はいつも桜でいっぱいだった。
憂鬱な手伝いや行商も、里であいつが待っていると想像するだけで楽しくなった。
これが終わったら、桜に会える。そう想像するだけで頑張れて、帰って笑顔を見たら、疲れも一瞬で吹き飛んで癒された。