月姫の祈り
もう会えないと思っていた。
月は私達の里で1番剣や弓の腕が立つ若者だったが、この国の兵士達には敵わないーー。
目の前で両親やみんなの命を奪われ、里を焼かれたあの光景を見たら、絶望しかなかった。
……けれど、生きていた。
月が生きていてくれた。
それだけで嬉しくて嬉しくて、堪らない。
だって私は、月の事がずっとずっと好きだったから……。
今も忘れない。
里のみんなの為に能力を使う私に、月が言ってくれた言葉。
『いつもお前がする”願い”ってさ。それって結局、特をすんのは里のみんなで、桜自身の夢じゃないじゃん』
私の能力は人の夢を叶える為の力であって、自分自身には使えない。「誰かを助けたい!」って想いがなきゃ、使えない能力。
『んじゃさ!桜願いは、俺が叶えてやるよ!俺がお前の夢を叶える、約束だ!』
約束の、言葉。
12歳の春、幼馴染の貴方が愛おしい人に変わった。