月姫の祈り
その日から月は急に大人になっていって、私より低かった身長もみるみるうちに高くなっていった。可愛い顔もカッコ良く、貧弱だった身体も鍛え上げられた逞しく……。
18歳になった彼は、もう少年ではなく男性ーー。
隣にいるだけで、私はいつもドキドキしちゃって、こんな風に抱き付くなんて出来なかった。
「……。
……う、……桜」
「!……あ、ッ」
耳元で響く声にドキンッと跳ねる鼓動。
名前を呼ばれて、ようやく自分がしていた行動が恥ずかしいものだと気付いた私は月から離れると真っ赤な顔を押さえた。
涙で濡れていた頬を拭いながら顔を隠していると、その手を彼に掴まれる。
「再会を喜ぶのは後だ。今すぐここを離れよう!」
「えっ?」
「街はずれに馬を用意した。明日の婚儀の準備で警備が手薄になっている今なら抜け出せる!すぐにーー……」
その言葉にハッと現実を思い出した私は、月の手を振り払った。