月姫の祈り

「?……(おう)?」

「逃げてッ……!今すぐ、ここから逃げて!」

突先によぎる想いと、あの日の残酷な光景ーー。

私が逃げたら、一緒に居る所を見られたら(げつ)まで狙われる!
里のみんなのように殺されてしまう!!

それは、それだけは絶対に嫌だった。
彼だけは失いたくない。

(げつ)は迎えに来てくれた。
幼い頃、消極的で家にこもりがちだった私を、外に……。光の射す方へ導いてくれたように。
その名の通り、暗闇を明るく照らしてくれる私の月光。

だから、もう充分だ。

「行って、(げつ)
……お願い、っ……行って」

もう充分ーー。
そう思って、笑顔で彼を見送りたいのに、上手く微笑む事が出来ない。
それでも頑張って笑顔で見上げようとした。

でも……。

「それが本当に、お前の心からの願いなのか?」

(げつ)の約束の言葉が、私の強がりをあっと言う間に打ち消した。
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